部分放電(コロナ放電)試験器のメーカー、アドフォクスです。
皆様お久しぶりです。

一昨日3月26日の晩には金星と月と木星が一直線に並んだ光景が見れました。
月も惑星もいつも見ている夜の景色ですが、並びが違うだけで受ける印象が変わるのは面白いものです。


(写真) 金星と月と木星が一直線に並ぶ

さて、以前に「高周波の部分放電は電荷量が分からない」という記事を書いた事がありました。
この件は非常に質問が多く、現場で困っている様子が当社まで伝わって来ます。
そこで今回は改めて、表現を変えて書かせて頂きます。

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近年は高周波で使用する部品やインバータ駆動によるモーターが増えるに伴って、サージが発生したり部分放電(コロナ放電)が発生し、それによって絶縁層や巻き線がダメージを受ける現象が増えています。


(写真) 絶縁層や巻き線

インバータ駆動によるモーターの試験方法を定めたIEC文章(IEC61934TS)がありますが、内容に不十分な箇所がある為に、(社)電気学会の調査専門委員会で共同実験を行い、IECに新たな提案をしました。

その委員会「繰返しインパルスにおける部分放電計測調査専門委員会」による電気学会技術報告1218号「繰返しインパルスにおける部分放電計測とインバータサージ絶縁」が2011年の4月に発行されています。

この中に最近の文献が紹介されており「従来の商用周波数(50Hz/60Hz)で試験する部分放電試験器と異なり、印加するインパルス電圧に重畳される部分放電信号を検出する為に、通常高周波のみを検出する方法がとられる事から信号を積分して電荷を求めることはできません。」とあります。


(写真) インバーターで使用されるモーター

また電気学会(2010年3月70頁)報告では、交流電圧での部分放電計測法IEC60270で規定されているpC(ピコクーロン)単位の電荷校正は原理的に不可能であると報告されています。
電気学会JEC-0401-1990の部分放電規格には計算式が示されていますが、本当の電荷を測定できないので、測定値を”見かけの放電電荷”と称する、と記してあります。(真値は分からないという事です。)

以上の理由により、当社では高周波部分放電試験(コロナ放電試験)において電荷量を測定しません。
「繰返しインパルスにおける部分放電計測とインバータサージ絶縁」(電気学会技術報告書第1218号)をご覧になり、必要に応じて基の文献を参照されることをお薦めします。

なお、当社アドフォクスのXTシリーズでは以下のようにしてコロナ放電を検出します。

(1) コロナ検出方法
コロナ放電が発生した時には、低周波から3GHzに及ぶ放電信号が発生します。
そこで、アドフォクスのコロナ放電試験器XTシリーズは、10MHz~50MHzの信号を検出してコロナ放電の有無を判定しています。

(2) 標準機
標準コロナ発生器(CR1001)を使用して、当社XTシリーズは調節、検査の後に出荷しています。


(写真) 標準コロナ発生器(CR1001)

標準コロナ発生器の特性は東京都立産業技術研究センターにて測定し、評価してあります。
(しかし、V-Q測定には高周波の電荷を求めることが出来ない問題と、本当の電荷は測定できない問題があります。この標準コロナ発生器とV-Q測定の件については別途、記事を起こします)

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前回に比べると専門の方には今回の方が話が早かったかと思います。

当ブログでは色々な立場の方を対象として、色々な角度から説明を試みます。
お困りの事象に一つでもお役に立てれば幸いです。

もし、部分放電やコロナ放電で困っていたり、絶縁破壊の原因が部分放電と疑わしい場合には、気軽に当社まで御問い合わせ下さい。