その耳掃除、本当に必要?

ついやってしまう、毎日の耳掃除

お風呂あがりや朝の身支度のついでに「毎日耳掃除をする」という人は少なくありません。特に綿棒で耳の中をぐりぐり掃除するのが気持ちいい、という方も多いのではないでしょうか。

でも実は、その“毎日の耳掃除”が、耳にとっては負担になっているかもしれません。

実は耳は“自浄作用”のある器官

耳の中には「耳垢腺(じこうせん)」という分泌腺があり、そこで作られる耳垢には、ほこりや細菌の侵入を防ぐ役割があります。そして、私たちの耳の中は、咀嚼など、あごを動かしたりする日常の動きの中で、自然と耳垢を外へ押し出す“自浄作用”が備わっています。

つまり、本来は毎日耳掃除をしなくても、耳の中はある程度きれいに保たれる仕組みになっているのです。

耳掃除の“やりすぎ”で起こるトラブル

耳垢を奥に押し込んでしまう

綿棒で掃除をしていると、耳垢を外に出すつもりが、逆に奥へ押し込んでしまうことがあります。これが続くと、耳の奥に耳垢がたまってしまい、「耳垢栓塞(じこうせんそく)」という状態になることも。

耳の中を傷つけてしまうリスク

耳の穴(外耳道)の皮膚はとても薄くデリケートです。綿棒や耳かきで強くこすると、簡単に傷がついてしまいます。そこから炎症が起きたり、かゆみや耳だれの原因になることもあるため、無理に掃除をしないことが大切です。

聞こえに影響が出ることも

耳垢のつまりや炎症によって、音がこもったように聞こえることがあります。普段と違う聞こえ方をしたり、詰まった感じが続くときは、自分でなんとかしようとせず、耳鼻科で診てもらうようにしましょう。

耳掃除はどれくらいの頻度で?何を使う?

基本は「月1回程度」「見える範囲だけ」

耳掃除は毎日する必要はありません。月に1回程度、耳の入り口付近の見える範囲だけをやさしく拭くのが理想的とされています。

耳の奥に入れすぎるとトラブルの元なので、「奥までは掃除しない」が基本です。

道具は「綿棒」より「やわらかい布」がおすすめ

綿棒や耳かきを使う場合は、力を入れず、深く入れすぎないようにしましょう。
それよりも、タオルやティッシュなどで耳の外側を軽く拭く程度でも、清潔さは十分保てます。

「耳の中まで掃除しないと気が済まない」という方は、一度“やさしく拭くだけ”を試してみてください。意外と不快感がなく、耳への負担も減らせます。

かゆみ・耳だれ・詰まり感があるときは耳鼻科へ

違和感がある場合は、自己判断で綿棒を使い続けるのではなく、早めに耳鼻科を受診するのが安心です。特に耳だれや強いかゆみ、聞こえづらさがあるときは、症状が悪化する前に専門の診察を受けましょう。

高齢者の耳掃除はどうしたらいい?

加齢とともに耳垢がたまりやすくなる

年齢を重ねると、皮膚のターンオーバーが遅くなったり、あごの動きが少なくなったりして、耳垢が自然に出にくくなることがあります。さらに、補聴器や集音器を使っている方は、耳の中がこもりやすく、湿気や耳垢がたまりやすくなることもあります。

家族がやる場合は「見える範囲だけ、やさしく」

高齢のご家族の耳掃除をする場合は、無理に奥まで取ろうとせず、耳の入り口周辺だけをやさしくふき取るのが基本です。奥に詰まっているように見える場合は、無理に取らず、耳鼻科で対応してもらうようにしましょう。

耳の中も「そっと」が正解

耳掃除は、やりすぎないことが大切です。
清潔に保ちたい気持ちはよくわかりますが、過度なケアはかえってトラブルを招く原因にもなります。

耳は、私たちが世界とつながる大切な感覚器官。
だから「見えないからこそ、やさしくそっとケアする」。
そんな気持ちで、日々の耳の健康と向き合っていきたいですね。